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ゲーム脳、未だにあなたは信じていますか?

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はじめに

私が小学生の時は、友達の家でゲームをして遊ぶということが当たり前のようにありました。

大人達は口を揃えて「我々が君らくらいの頃は、外で元気に遊んでいたなぁ…(だからそんなものやめろ)」と言ってきました。

とはいえ最近は子供を狙った事件が多発していることもあり、保護者としては外で遊ばせることに不安に思うこともありますが、室内で遊ぶことのできるテレビゲームであれば安心です。テレビゲームというのは、現代社会が作り出した新しい遊びのスタイルともいえますね。

しかしゲームを長時間プレイすることによって、勉強時間や睡眠時間が減ったりしていて大きな社会問題となっています。

そこで大人達は「そんなにゲームばっかりやってたら”ゲーム脳”になっちゃうよ(だからそんなものやめろ)」と続けます。

この「ゲーム脳」という言葉は、10年ほど前に新聞や雑誌などのマスメディアが流行させ、多くの人々が信じました。きっとみなさんもどこかで一度くらいは聞いたことがあると思います。
今回はこの「ゲーム脳」とは一体どんなものだったのかを解説していきます。

そもそもゲーム脳って?

そもそもゲーム脳とはどのようなものなのでしょう。

このゲーム脳という言葉は学術的に広く一般的に用いられているような用語ではなく、森昭雄という学者が独自に生み出した理論で、著書の「ゲーム脳の恐怖」によって世間に広まった言葉なのです。

ゲーム脳の状態かどうかというのは、正常な脳波とされるβ波が異常な脳波とされるα波に対する割合が低い状態が、ゲーム脳であると定義されています。またその脳波の状態は、認知症の患者と同じ状態になっていると主張しています。

またゲーム脳の症状として、感情の抑制が効かなくなってキレやすくなったり、集中力がなく忘れっぽくなったり、コミュニケーションが上手くとれなくなってしまうことを主張しています。

このような主張のため、多くの親にとっては「子供のゲーム漬け」をやめさせる格好の理由付けとなり、広く世間に受け入れられることとなりました。
またマスメディアで大きく取り上げられたこともあり、流行語大賞にノミネートされたりして大きな社会現象となりました。

ゲーム脳に対する批判

結論から言ってしまうと、上記のようなゲーム脳の主張に対する批判は既に多く上がっています。 その中でも特に代表的な批判3点について紹介します。

主張する脳波計による測定での是非

ゲーム脳という言葉を広めた森という学者は、彼が独自に作った簡易的な脳波計で対象となる人の脳を測定します。
しかしこの機械で測定されたデータには、まばたきや目の動きなどで入るノイズが大きく占めていて、肝心の脳波だけを取り出すことは不可能に近いという指摘がされています。

そもそも脳波を測ってわかることなのか

仮に上記の脳波が、何らかの方法で独立して取り出すことが出来たとします。
しかしα波が多く出ている状態というのは、一般的に精神的にリラックスしている状態なので、そもそもα波を異常な脳波としている時点で疑問に思います。
また、β波が低ければ認知症という医学的な根拠もありません。

曖昧な調査による統計

これらの主張が仮に正しかったとしても、その根拠となる調査に信頼出来るような統計が取れていないことに最大の問題があります。
ゲーム脳の状態に近いとされる認知症の患者をたったの37名しか測っていなかった点や、ゲーム脳とされる人々がゲームに触れている時間の対比をしていない点などが挙げられます。
37名の調査が、これこれこういう理由で統計的に十分な人数だという記述も彼の著書には見られませんでした。

他にも提唱者自信のゲームに対する基本的な知識が欠如していたり*1と、ゲーム脳理論に対する批判は多くあります。
また、驚くべきことに この様な理由で、もはや学術的には全く相手にされていないのが現状のようです。

まとめと考察

数年前あれだけ騒がれていて問題視されていたゲーム脳という理論は、このゲーム脳理論は一見科学の装いをしただけのいわゆるニセ科学に分類される理論です。
しかし子供にゲームをやめさせたい保護者を中心に、世間的には広く受け入れられてきました。 科学的に信頼出来るような検証もせずに、流布してしまうようなマスメディアの責任も非常に大きいです。

今回ゲーム脳について否定的な意見を書きましたが、ゲームが人体に悪影響を与えるかどうかという話は全くの別件です。
中国や韓国の研究グループによる脳画像の撮影などの研究で、ゲーム依存によって脳の白質の部分に損傷が起きることが確認されました。
しかし、このことは上記のゲーム脳理論に対する批判を踏まえれば、この発見がゲーム脳理論を裏付けることにはつながらないことは明白です。

世間的に科学的なリテラシーがあれば、これほどまでにゲーム脳理論が受け入れられることはなかったと考えます。
このような素人にとって理解しがたい話は特に、鵜呑みにすることは避けるべきだと考えます。

おわりに

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さて少し話はそれますが、ゲームを長時間プレイしていると目が悪くなるというのも、ゲームの与える大きな悪影響の一つであると考えられます。

私が高校生の時、実は1日何時間もゲームをしていたのですが、それでも視力は大して変わりませんでした。
しかし大学に入って毎日レポートに追われる生活をしていると、みるみる視力が落ちていきました。それまでは裸眼でも何の問題もなかったのにもかかわらず、そのレポート生活を経てからはメガネをかけなければ黒板の文字が見えない程までになってしまいました。
当然ゲームをする余裕なんてなかったのですが、レポートに追われるあまり、他の勉強に費やす時間すらも削らざるを得ない日が何日も続いたこともあります。

つまり私が言いたいのは「ゲームなんかやるよりもレポートばっかり書いている方が体に悪影響があるんじゃないの!?」ということです。

さて次回のテーマは、レポートが人体及び脳に与える悪影響「レポート脳の恐怖(著:KOTO)」です! お楽しみに!(嘘)

*1:RPGを自分が敵に見つかって殺されないように敵陣に進入し、相手を威嚇しながら画面上を突き進んでいくというゲームと説明している