KOTOの理科的つぶやき

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「意外と知らない消化の話」~食べたモノって体の中でどうなっていくんだ?~

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はじめに

皆さんこんな話を聞いたことはありますか?

「ウンチの9割は食べ物のカスではない」

食べたものが体の中でどうなっているのか、皆さん以外と知らないのではないでしょうか?
当たり前のように、今まさしく私たちがしていることなのに意外と知らない消化と吸収の話。
でも知ってて常識のこの話。
さあ、この人体の不思議な世界をのぞいてみましょう。


体の中では何をしているの?

我々動物は、食べたモノがそのまま直接体になるわけではありません。
体が吸収できるように、小さく分解しないと体に取り込むことが出来ないのです。
大きなステーキを食べるとき、そのままでは食べることが出来ません。きちんとナイフで一口サイズのバラバラな状態に切り分けてからでないと、食べることが出来ないのと似ています。
この、ナイフで一口サイズに切り分けていく作業のことを「消化」と言います。
そして、この切り分けられたこの栄養素を取り込むことを「吸収」と言います。

(関連記事として前回書いた栄養についての話があるので、こちらも読んでみてください。)

koto-science.hatenablog.com


消化器官の構造

食べたものが口から入ってウンチになるまでに通る道を「消化管」といいます。

この消化管はざっくりいうと、
口→胃→十二指腸→小腸→大腸
を通る管です。

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これに加えて消化液を出す、だ液腺や膵臓(すいぞう)、肝臓や胆のうなどの臓器をひっくるめて「消化器官」といいます。

それでは前回説明した三大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)に注目して、消化吸収の様子を追いながらそれぞれの器官の働きを見ていきましょう。


口の役割は、食べたものを粉々につぶすことです。
そして口から分泌される「だ液」の中の「アミラーゼ」という物質によって、お米やパンなどに含まれているデンプンを「麦芽糖」という糖に分解します。上記のステーキの例で言うと、アミラーゼはステーキを切り分けるナイフに当たります。この様に、食べたものを分解させる物質の事を消化酵素と言います。
つまり、実はデンプンは糖がつながったものなのです。ご飯をよく噛んでいると、甘く感じるのはこのことからだったのですね。

この後に食道という管を通って、食べ物は胃に運ばれます。

胃では、胃液の中のペプシンという消化酵素によってタンパク質を細かくしたり、食べ物に含まれている細菌やウィルスなどを殺したりします。
ちなみに胃液が酸っぱいのは、実は"塩酸"によるものなのです。塩酸とは化学の実験で使う、直接手で触れてはいけない!でおなじみのその塩酸です。
気分的にそんなものが体の中にあったら害があるような気もしますが、粘液が胃を守っているので問題ありません。

ちなみに胃の大きさは個人差がありますが、胃は小さいときで100mL位から、大きいときで2000mL位までになるようです。
醤油差し位のサイズから、大きいペットボトル位のサイズになってしまうということです!

十二指腸

十二指腸では、膵臓や胆のうから送られた消化液によってさらに細かくしていき、同時にカルシウムなどのミネラルを取り込みます。
膵臓から送られる膵液は実はとってもスグレモノで、糖質やタンパク質、脂質のどれもに影響する消化酵素を持っています*1。また胆のうから送られる胆汁には、脂質の分解を助ける働きがあります。
ちなみにウンチの色は、この胆汁に含まれている色素によるものなのです。

小腸

小腸の役割は胃から運ばれたものをさらに分解したり、分解した養分を吸収したりすることです。
小腸からの消化酵素*2によって炭水化物の糖質はブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸に最終的に分解されます。
そして分解されたものは、小腸の壁に吸収されます。この壁はすごく拡大して見ると、小さな突起が並んでいる構造をしています。実は小腸を全部広げるとテニスコート1面分になる程の表面積なので、それだけ効率よく吸収できるということです。
この小腸で、食べたものの養分はほとんど吸収されます。

大腸

大腸の役割は主に水分を吸収する事です。
正常に大腸が働いていると、ウンチはバナナ型になります。ちゃんと働いていないとバナナシェイクになりますね。
また、大腸には約1000兆個もの細菌がいます。重さで言うと1.5kgほどです。
なんとなくめちゃめちゃ体に悪そうな気もしますが、細菌の中には善玉菌という、ビタミンを作ったり、他の悪い細菌から守ってくれたりと体に良いものもいるのです。他にも体に悪さをする悪玉菌や、普段は何もしないけど体の調子が崩れた時に悪さをしてくる日和見菌がいます。
ちなみに健康な人の腸の中の内訳は、善玉菌が2割、悪玉菌が1割、日和見菌が7割と言われています。


まとめ

色々寄り道しながらの説明にはなりましたが、ここまでが食べたものが消化されて体に吸収されるまでの一連の流れです。
消化の話はちょっとややこしかったと思うので、概略図を描きました。

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一連の消化でできたブドウ糖や脂肪酸、モノグリセリドやアミノ酸などは小腸等で吸収されて、水分は大腸で吸収されるという流れです。


ウンチの中身って結局…?

冒頭でも言った通り、食べたものはほとんど吸収されてしまいます。
実はウンチの中身は8割が水で、残りの3分の1が食べものの残りカス、3分の1が細菌やその死骸、3分の1が古くなった腸内の粘膜なのです。

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食べカスの成れの果ての姿なのだろうと思っていたと思うのですが、実はこんな内訳になっているのです。びっくりですね。


おわりに

ここまでの話は、決して他人事ではありません。今、まさしくあなたの体の中で起きている話なのです。
体の中がどうなっているのか、全然知らない人もいたでしょう。
それでも私たちが体の事をどんなに知らなくても、勝手にやってくれています。

これって、なんだか不思議なことだと思いませんか?

気が向いたら生物の不思議シリーズ、これからも書いていくつもりです!
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!

*1:アミラーゼやマルターゼ、トリプシンやリパーゼがある

*2:マルターゼやエレプシンなどなど